昨日はフンザの奥地「パスー」へ小旅行してきた。が、特筆すべきことが無いので割愛する。
割愛するとか言いながら少し触れると(聞いて欲しがりである)、パスーは絶景だった。のどかな農村で、遥か遠くに「パスーコーン」と呼ばれる巨大な山脈が鎮座している。それらは鋭いトゲのような山頂を連ね、巨人を拷問する剣山のようにも見えた。
パスーへの道は、岩山を切り開いた曲がりくねった道で、車の向きが変わる度にパスーコーンを左右に見ながら走った。
また道中に吊橋があり、スリリングなことで有名なので立ち寄った。吊橋は確かに怖かった。橋床がスカスカすぎて、下方に大きな河がたくましく流れているのがありありと見える。吊橋を渡っていると、足元ではなく河の方に焦点が合ってしまい、思わず足を踏み外しそうになる。
橋の中腹まで行くと、四方八方も”足元も”大変見晴らしが良く、風を受け、吊橋に上下に揺られ、非現実的な景色も相まってまるで幽体になってパスーコーンを眺めている気分になった。
吊橋の周囲は完全に観光地されていてげんなりしたが、僕は煙じゃない方の高所好きなので割と結構楽しめた。
結局、長々と書いてしまった。
今日は本格的に雨が降っているし、すごく冷える。1日どこにも出かけないことを決めた。
そういえば泊まっている宿について書いていなかった。「Ultar House」という宿のダブルルームに1人で泊まっている。快適だし、屋上からの眺めは素晴らしいし、オーナーが気さくで楽しい。昨夜オーナーと長話していた流れで、マサラチャイの作り方を教えてもらえることになった。(というより僕が図々しくお願いした)
朝、宿の食堂に行くとオーナーはスパイスを皿に用意して待っていてくれた。早速レクチャーが始まる。
まず鍋で水と牛乳を混ぜて沸かす。配分は好みだ。その脇で、クローブ、カルダモン、シナモン、黒胡椒を空炒りしておく。
スパイスの香りが立ってきたら、それらを鍋に投入、2分煮出す。
そしていよいよ茶葉を投入。1カップにつき1スプーン。
沸騰してきたら、撹拌して温度を下げつつ空気を混ぜる。オーナーは、神社の柄杓みたいなので掬っては高い位置から注ぎ戻していた。
途中でジンジャーパウダーを加えつつ、茶葉を5分煮出して完成だ。
さて、いただきます。
おいしい。冷えた体がじんわり温まる。スパイスの香りにリラックスしながら、しばし談笑して至福の朝を過ごした。
そういえばこの旅行記ではやたらとチャイとかミルクティーのことばかり書きすぎて、読者は飽き飽きしているかもしれない。が、どうか長い目で読んでいただきたい。というのも、チャイはパキスタン(や周辺国)において1つの完成された素晴らしい文化なので、どうしても旅行の思い出がチャイに紐付いてしまうのだ。
ここまで読んでくれた辛抱強い読者には、僕が習得したチャイを是非とも振る舞いたい。
日本人の感覚でいえば冬のような寒さだが、真冬に-20℃まで冷え込むフンザにとってはまだ秋の序の口らしい。が、日に日に気温が落ちていくのを感じると、この先の季節がどんな風に変わってゆくのか気になり、フンザで1年を過ごしてみたいという気が湧いてしまう。
パスーコーンと吊橋